山崎さんの雄勝硯
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伝統工芸士の山崎さん
雄勝の石は古くから大変有名で、硬質粘板岩からなる艶のある黒色、深みのある光沢が特徴です。吸水性が低く、圧縮や曲げにも非常に強い為、硯の素材としては大変適しています。開和堂硯舗の山崎さんは、そんな国内でも屈指の硯の名産地である、宮城県石巻市の伝統工芸士です。実際の作業現場を見学させて頂くと、長さ40~50?はあろうかという物凄く大きな鑿を肩の前方に押し当てられ豪快に石を削っていかれます。ご高齢にも関わらず、その作業の様子もご自身も大変パワフルな方で、いつもお会いする度に元気を頂いています。
1つとして同じ形がない硯石
山崎さんが作られる硯はどれも石をそのまま切り出した自然の形そのものに、1つとして同じ形の硯がありません。自然の石そのものの為、どれも形が非常にユニークです。余計な加工をしない為、中には靴の形をしたような硯石など、その形は様々。また形だけではなく、石内部の層や表面の凹凸が当然の如くそれぞれ違っている為、観賞していても全く飽きない面白味があります。更に山崎さんの硯石の多くは、硯にしては珍しい「蓋」がついているのが特徴で、その蓋は一枚岩を2等分し硯と蓋を同じ1つの石として重なるように作られています。実際の使用中に、蓋をしておくと墨液が宿墨(※墨液の腐敗)の防止効果にも役立ちます。
硯の蓋に込められた意味
山崎さんの硯石の蓋の幾つかには「1本の松」が彫られているものがあります。これこそが当時よくテレビ等でも中継されていた「奇跡の1本松」。というのも、産地である宮城県石巻市といえば、まだ私達の記憶でも新しいですが、2011年(平成23年)3月11日に起こった「東日本大震災」で最も津波の被害があった場所。多くの方々がその津波の被害で亡くなられました。実は山崎さんの奥様もその津波によって亡くなられているのです。硯石の蓋に彫られた1本松には山崎さんの祈り、そして想いが込められているのです。