墨の選び方

墨を磨る

中国から伝わった墨は古来より、役所などで使用される筆記材としてはもとより、仏教による鎮護国家であった日本において、お寺のお坊さま達が仏様に功徳を積む行為として盛んに写経を行う際に盛んに使用するなど、大変重宝されてきました。写経は「祈りの行為」、そんな歴史背景もありつつ、無心で墨を磨る時間は、気持ちを静め、心を整え、精神統一にもつながると言われています。様々なストレスの多い現代社会だからこそ「墨を磨る」行為が、日本人の心を落ち着かせるきっかけになってくれるはずです。またその文化は日本国内はもとより今日では世界にも広がりを見せています。

墨を磨る

固形墨の特徴と墨汁の違い

似て非なる固形墨と墨汁。固形墨には固形墨の、墨汁には墨汁の、それぞれの良さがあります。
使い分けをして頂くのが一番良い方法ですが、
ここでは特に一般的な墨汁には無い固形墨の特徴を中心にご紹介していきます。

  • 墨色と墨の濃淡

    「墨に五彩あり」と言われるほど、墨は墨色の中に沢山の色味を持っています。その色の幅は一言で言うとまさに繊細。非常に味わい深く、奥深い色の幅を持っているのが特徴です。単純な「黒」という中に多くの表現の幅を持っているからこそ、字を書くだけでなく、水墨画といった絵などでもその色味の表現の幅をふんだんに活かした作品などを生み出すことが出来ます。また色味だけでなく、使用する水の量で濃淡の幅を使い手が自在につくることが出来るのも大きな特徴の一つです。

    墨色と墨の濃淡

  • 墨の滲(にじ)み

    固形墨ならではの独特の表現力として、墨の「にじみ」があります。具体的にいうと筆で書かれた字の外側から、水と一体化した墨液が更に外側へ流れ出していく、紙の繊維の中を這うように滲み広がっていく様のことを言います。その滲みこそが、書かれた作品に更なる奥行きを持たせることとなり、中にはその滲みをふんだんに利用した作品を作られる方もおられるぐらいです。世の中には沢山の筆記材があるものの、このような滲みといった表現力を持つ筆記材は世界に類を見ない大変貴重な筆記材といえます。

    墨の滲(にじ)み

  • 墨の耐久性

    墨で書かれた文字は1000年残ります。こちらは1000年以上前に墨で書かれた木簡や紙面などが現在でも残ることから既に実証済みです。他の筆記材の追随を許さない墨で書かれた作品の圧倒的な耐久性。こちらは墨の主原料の1つである「膠(にかわ)」によるもの。膠は水との相性がよく、書かれた文字を土台となる木や紙の繊維の奥深くへ運び込み浸透させる働きを持っています。一度繊維の中に浸透して固まった文字は消えることはありません。まさに材料に膠を含む固形墨ならではの耐久性と言えます。それは日本の歴史を紡いできた墨の偉大さとも言えます。

    墨の耐久性

  • 墨を磨る時間

    墨汁との決定的な違いはまさにこの「墨を磨る時間」。日本には古来より書道において墨を磨る時間が存在します。日本には沢山の「道」があります。書道・華道・茶道・柔道・剣道…それら全てが物事を行う前や、その過程の最中に必要とすべき礼儀・作法が含まれています。礼儀・作法にのっとり、気持ちを鎮め、心を整えるからこそ目の前の物事に集中して取組むことが出来るのです。それ故、墨を磨る時間というのはまさに書に向きあう為に「心を整える時間」そのものといえます。利便性を追及し過ぎた現代において、決して失ってはいけない時間。その一つが墨を磨る時間とも言えるのではないでしょうか。

    墨を磨る時間

墨の選び方

墨の特徴は前述で触れましたが、使う方にとって何が良い墨かは一概に言えません。
ここでは具体的に墨の大きさや種類、用途によって選ぶことが出来るようにしています。
ご自身が求める墨の条件にあったものを以下の中から選んで頂ければ幸いです。

墨の大きさで選ぶ

墨の大きさを表す単位は「丁(ちょう)」。これは重さが基準になっており、1丁型の墨は15gです。
表はあくまで基本で墨によっては若干の個体差があることだけご了承下さい。

墨の大きさ 縦の長さ 横の長さ 厚み 重さ
1丁型 78mm 19mm 8mm 15g
2丁型 92mm 24mm 11mm 30g
3丁型 105mm 28mm 12mm 45g
4丁型 120mm 31mm 13mm 60g
5丁型 135mm 33mm 13mm 75g

墨の大きさ

墨の種類で選ぶ

墨は「煤(すす)」と「膠(にかわ」)と「香料」という原材料から出来ています。一般的には「煤(すす)」の種類の違いによって墨の分類はなされます。

名称 材料 詳細
油煙墨 胡麻油 胡麻油を使用。
菜種油 菜種油を使用。
鉱物油 鉱物性油を使用。
松煙墨 赤松 紀州産。老松と生松を使用。
青墨 染料 染物で使用される藍汁を使用。
顔料 日本画で用いられる顔彩を使用。

市場に出回る墨の多くを占めるのが菜種油を原材料とする「菜種油煙墨(なたねゆえんぼく)」です。また油煙墨の中には胡麻油を使用した「胡麻油煙墨(ごまゆえんぼく)」があり、他にも桐油などでつくられることもあります。「松煙墨(しょうえんぼく)」は赤松の木を燃やして採取します。国産の松煙は現在、国内でも特定の事業者、特定の場所でしか生産されていいない為、大変希少価値が高いとされています。青墨は墨の基本原材料へ更に、藍染の藍汁や顔料等を加え色付けしたもので、書かれた文字はやや灰色がかった色合いが特徴でよく水墨画などで使用されることが多いです。

墨を使用用途で選ぶ

  • かな・細字用

    かな・細字用

    一般的に、仮名文字を書く際には、上から下にサラサラ書いていけるように、材料となる煤の粒子が細かく、膠の粘り気が少なくものを選ぶのが良いとされています。用途的にもそれほど大量に墨を磨るものではないので、比較的小さいサイズの墨から選んでいます。

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  • 写経用

    写経用

    写経用では仮名文字同様、膠の粘り気が少なく滑らかに書ける墨が適しており、それでいて黒色が濃く、はっきりと映えるものを選ぶのが良いとされています。写経を行う際の墨の使用量としてはそこまで必要ではないので小さな上質の墨をここでは選んでいます。

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  • 漢字・大字用

    漢字・大字用

    大きな作品に使用する際や、漢字などを書く際には、色濃くしっかりとした黒味が栄える墨が適しています。また大きな作品を書く際は、当然の事ながら大量の墨を磨る必要があるので大きな墨を選ぶべきです。ここでは比較的大きい墨や黒の色味が濃い油煙墨を中心に選んでいます。

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  • 絵手紙・水墨画・書画用

    絵手紙・水墨画・書画用

    最近、女性の方を中心に絵手紙などは大変な人気があります。女性ならではの柔らかい色味や鮮やかな色彩を表現する作品には青墨系の墨が向いています。色味が徐々に青味がかっていく松煙墨や、染料や顔料を混ぜ合わせた青墨などからここでは選んでいます。

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おすすめの固形墨

こちらではお求めになられる方、それぞれのシチュエーションに合わせて、
独自で錦光園おすすめの墨を選んでいます。
書道初心者の方からお土産まで、墨選びを迷った際の参考にして頂ければ幸いです。

シーンで選ぶ

  • 墨そのものの美しさを楽しみたい方に

    墨そのものの美しさを楽しみたい方に

    「昔していた書道をまた始めようと思っています。どんな墨を使えばいいですか?」工房で大人の方によく聞かれるこの言葉。用途によっても当然様々ですが、墨による書き心地や、色味など、大人の方だからこそ分かる楽しみもあると思います。そんな違いの分かる大人の方に楽しんで貰えるような墨を、かつ手軽に様々な用途でも使える墨をここでは選んでいます。

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  • 書道をもう一度始めようと思われている大人の方に

    書道をもう一度始めようと思われている大人の方に

    墨にはその表面には凄まじく緻密で美しい図柄などが施されているものが多々あります。また、その形状においても立体感のあるユニークなものもあり、墨の美的調度品としての魅力を端的に表しています。中でも多いのは龍や風景画、人物や動物などの図柄であり、1品毎の図柄が大変特徴的です。見た目の美しさもしっかり楽しみたいという方にも喜んで頂ければ幸いです。

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  • お子様の習字用に

    お子様の習字用に

    学校や習字教室で使用するお子様の墨をお母さんが用意する場面は多々あると思います。そんな時やどこで何を探したらいいか分からないお母さんの為に、お子様の習字用の墨をご用意致しました。いずれも黒色がはっきりと出る墨を選んでおりますのでお子様の習字用に是非どうぞ。

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  • 墨の産地「奈良」のお土産に

    墨の産地「奈良」のお土産に

    江戸時代以降、墨は「大和の土産物」として大変喜ばれてきた歴史があります。墨を使って書くのは勿論のことですが、墨は丁度品としての魅力もありますので見て楽しむ奈良のお土産としても使って頂けると思います。また日本文化を代表する伝統工芸品でもありますので、海外の方へのお土産としても大変喜ばれています。錦光園では通常の形状の墨以外に、飾り墨も多数ご用意していますので是非ご覧になって下さい。

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