墨
ただの黒い塊が形を変え1つの作品に変わる。
字や絵。
黒といってもその奥行きの色合いは千差万別。
その懐の深さは他の筆記材の追随を許さない。
千年以上前から作られているのに、何百年も前からその製造方法はほとんど変わっていない。
形を整えた墨たちは長い長い乾燥期間を経ていく。
製造には数か月、中には数年かかるものも。
その期間、墨は呼吸し続け、自身の中身を刻々と変化させていく。
「墨は生きている」とはよくいったもの。
まさに墨は生きている。
自分達は成長していく墨の手伝いを少ししているだけに過ぎない。
ただそれだけ時をかけて出来た墨たちは磨って一瞬で無くなる。
ただの黒い塊が見事な作品に生まれ変わる。
それが墨のはかなさであり墨の素晴らしさ。
かすれて無くなっていくものから浮かび上がる何か。
自分はその奥深さを表現できる言葉を持っていない。
それだけ墨の魅力は筆舌に尽くしがたい。
だからこそ沢山の方を魅了してやまないのも分かる気がする。
そして今日も墨をつくる。