故きを温ね新しきを知る
最近はシーズンオフという事もあり、墨作りの仕事が無い為、普段あまり出来ない事をしているのですが、その中の一つが墨に関する文献を読み漁ること。ジャンルがジャンルだけに一般の方にすればかなりマニアックな内容ではあるのですが、少なからずその仕事に携わる自分からすれば非常に興味深く、それ以上に読めば読むほど知らないことばかり。そして驚きの連続。何より驚きなのは何百年も前から今と同じ製法が完全に確立されていたこと。それが明確に資料として残存しているということ。普段から仕事をしていると、ふと「こういうのは出来ないかな?」的なアイデアは出てくるのですが、そのどれもが過去そういったもの、それに近いものがなされてきたという事実。それらは全て文献の中に記載されています。そういった事実を知れば知るほど先人達の営みの深さをつくづく思い知らされます。本当にまだまだ自分は勉強不足。ただ、過去の何百年~何千年の蓄積をこのタイミングで一同に読めるのは物凄い贅沢な事だと思っています。これから何をするかのヒントは全て過去の歴史に詰まっているはず。歴史を積み上げてきてくれた先人達に大いに感謝しつつ、それらを一つずつ丁寧に読み解き、今後の道標にしていきたいと最近特に思っています。
そう思っていた矢先、先日のことですが、墨型彫刻の師匠である中村雅峯さんのお家にお邪魔して仕事に関するご相談をしていた際、帰り際に「これ持って帰って練習しとき」と無造作に渡された練習用の木型の表題が「温古知新」。まさに偶然とは言えないぐらいのタイミングで、今の自分にとってはこれ以上無い宿題を出された気分でした。
梅雨もそろそろ終わりそうな時期。この夏はまさに格言の通り、過去の文献から知見を広げつつ、同時に「温古知新」を彫り上げたいと思っています。