七代目の挑戦

姿形を変える・・・

以前からも度々当WEBサイトでお話している墨型彫刻。製造の際に生の墨を専用の木型に入れて形を整えていきます。その際、木型の内部、生墨と木型が触れ合う部分には、きめ細かく美しい文字や絵柄が彫られており、それが何の変哲もなかった生墨を一気に美術的要素を持った工芸品に様変わりします。ある意味、墨の魅力の1つである視覚的な付加価値を高める(もちろんその後の乾燥の工程においても)最も重要な道具であり、墨作りにおいて無くてはならない技術です。

 

その墨型彫刻の技術を駆使して出来上がった墨を見て楽しむ事は当然出来るのですが、墨は何といっても消耗品。書いて使用するには当然の事ながら磨らなくてはいけません。その際、墨の表面の文字や絵柄は当然、少しずつ少しずつ欠けていきます。1mmにも満たない絵柄や文字の細かさが失われていくのは本当にもったいないから磨れない、というお客様を工房でもよくお見掛けします。ただそういった見た目にも美しい墨が磨られ使われる事によって、全く新しい作品に生まれ変わっていく様は本当に面白く、奥深い「筆記具」だなと常々思います。何の変哲もない黒い塊が世の人を感動させる作品に、大切な方に想いを伝える文に、1000年以上前に書かれた文字が今でも残る歴史の証人になっていくのです。もはや筆記具の域を遥かに超えていってしまっているように思えてなりません。

 

過去に工房に来られた方や、錦光園の墨をご購入して頂いた方から、墨で書いた作品やお手紙を多々頂戴する事があります。同じ墨を使用されていても当然の事ながら、届いたものは全く別物で、それぞれその方達の想いがそこには詰まっています。美しい模様が描かれた墨が、使われる方によってどのように様変わりしていくのか、それらをまた工房に来られたお客様に見せて頂けるのををこれからも楽しみにしています。

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